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日本繊維新聞 掲載記事「”美”再発見 可能性に挑む」(抜粋)

2007/10/02

日本繊維新聞(10月2日付・全国版1面)に掲載されました記事(抜粋)をご紹介いたします。
記事の内容についてのお問い合わせはkasane@yamakyu-urushi.co.jpまでお願いします。

「益田織物、山久漆工、コロラット ”美”再発見 可能性に挑む 越前塗り×大島紬ネックレス」

このほど、大島紬織り元の益田織物(鹿児島市)、越前漆器製造販売の山久漆工(福井県鯖江市)とジュエリーメーカーのコロラット・コレクチェ(東京)の3社コラボレーションにより、越前塗りと大島紬のネックレスが発表された。伝統に新手法を駆使し、泥染めによるつやとそれを生かした鈍い輝き。美の再発見で従来の枠を超え、販路開拓につなげていく。プロデュースはスタイリングワークス(東京)の小野恵美子社長。
スタートは5年ほど前にさかのぼる。大島紬の産地で様々な絣(かすり)糸をみて、その美しさに感動した小野さんが持ちかけた。「紬が紬として見えることも大事だが、繊維の可能性を広げたい。広がりはまたきものに戻る。」洋装紬の通販で実績のある益田織物が応えた。多くの試作の中から、より美しく立体的に見える4種の絣糸を組み合わせる。
絣位置を厳密に図案化して5センチ刻みで止め、極細糸14本で1つとし、6組にまとめる。髪にかかったり、バラバラになるのを避け、見えないところに革の植物染めの黒を用いている。手間がかかるだけでなく、ネックレスの織り完成品の手前である糸の状態、いわば未完の状態を完成品とするため、高度な技術を要する。益田勇吉社長は「市場で何が求められているか、アンテナを張って知っておくべき」と工芸品を解き放つ。
次に繊維のネックレスと相性のいいパーツを組み合わせる。
以前から越前塗りの新たな商品化を進めている山久漆工は、柔軟なアイデアを結集。泥染め絣糸を最大限に生かすため国産のブナ、サクラを丸く加工し、塗りを重ね、3つのパーツを作った。漆は研(と)いで塗り、研いで塗りの工程を繰り返して数カ月かけて仕上げる。今回、最後の塗りのあと、もう一度研いで鈍い輝きを表現した。山本泰三取締役は「これまで考えられない方法」という。 留め部は金属を差し込んで回して着脱する。外れず、外から見えず、トップにもなる。コロラット・コレクチェの雨宮ジロウ社長は「金属を最小限にして軽さを第一にした」と、ジュエリー専門ならではの工夫を凝らす。
実は山久漆工とコロラット・コレクチェは、越前漆を前面に出したジュエリー小物を開発中だった。例えば、呂色(ろいろ)仕上げという、塗りの最終工程に磨き上げを加えたトップ。蒔絵(まきえ)に用いられる技法だが、大島紬ネックレスのパーツと異なり、鏡のように輝く。これを引き立てるシルクと銀繊維をあしらう。
本来、紬も漆器も身近であったはずだが、高額の一方で扱いにくいという思い込みががハードルになり、需要が低迷。コラボレーションは「高くなっているハードルを下げるため、ツールを増やしていく」(山本取締役)一環だ。作品幅だけでなく、ネットや小売店へと業種を越えて販売が広がりつつある。