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社長レポート~漆を使って陶磁器を再生する「金継」イベントを英国にて開催

2014/10/04

ロンドンセミナー
レクチャー(オックスフォード アシュモリアン博物館) - コピー
ロンドンとオックスフォードで講演する山本泰三(弊社代表取締役)

1.活動のきっかけ

私は、2005年より父が営む漆器製造業の仕事につき、まず自社の商品開発力を高めること、販売先を開拓することに注力しました。しかし大量生産の時代に漆器や陶磁器など伝統的工芸品の国内需要は低迷し、新商品投入による販路拡大のむずかしさを実感しました。
一方で、江戸、明治の古い漆器や古い生活様式の中にデザイン性や心の豊かさを感じ、それを再生することの魅力を感じるようになりました。そして漆を使った陶磁器の修復技術「金継」と出会いました。金継を国内外で紹介し、漆の価値、伝統工芸、日本文化をよりわかりやすく伝えることで、漆器の需要を再喚起し、市場を再構築できると考えました。

2.英国で金継セミナーと金継教室を開催

今年1月、ともにプロジェクトを進める京都の職人とともに渡英しました。ロンドンでは、これまで製作した金継作品を紹介し、職人が実演する「金継セミナー」を開催しました。120名以上の英国人が参加し、大英博物館、ヴィクトリア&アルバート博物館関係者、ケンブリッジ等大学関係者、BBC等報道関係者が名を連ねました。オックスフォードにおいては大学付属博物館にて「金継教室」を開催しました。英国内で募集したのべ50名の参加者が壊れた焼物を持ち込み、金継を体験。参加者全員、満面の笑みで帰りました。

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3.英国での成功をうけて

アートの要素を持ちながら磁器の直し方を学ぶという身近さは、日本と生活様式の異なる英国人の心を強くとらえてイベント終了後も複数の博物館、大学関係者等からイベント開催要請がありました。この成果が風化する前に、再度、英国にて内容を拡充させながらイベントを開催すること、また同時に国内においてもイベントを開催し日本人の関心を強く引き付けることが活動目的を達成するためにとても重要であると考えています。

【補足説明】当社の「金継」への取組み

「金継」は、壊れた陶磁器を日本の漆工によって修復しアートとして元より価値をもたせて再生する技術です。金継を学ぶことで、壊れたものを直して大切に使い続ける心を知り、伝えることができます。今の日本が目指すべき再生のイメージと重ねて、思いをわかりやすく世界へ発信できます。漆器や陶磁器の作り手同士が産地・業種の垣根なくつながります。当社(越前漆器)は、益子焼、会津塗、九谷焼、山中漆器、越前焼、京漆器など全国の産地有志の協力のもとプロジェクトを立ち上げ、中小企業庁JAPANブランド育成支援事業に採択されました(平成24、25年度)。主な成果物として英国、仏国での金継イベント主催、展示会参加他、震災で割れた益子焼を会津塗の金継で直し被災地の再生シンボルを製作したほか、漆=JAPANが世界を継ぐイメージ作品として仏国営セーブル焼を金継で修復したもの等を製作しました。昨年11月、NHKクローズアップ現代にて当方の活動の一部が紹介されました。(執筆者:山本泰三)
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