包装へのこだわり Vol.125~128

「メーカーにとっての重要な作業」

桐箱や化粧箱のなかに入れて大切にお届けする漆器ですが、お客様が箱の蓋をあけたときにまず目にするのは、 紙や布できれいに包まれた状態の漆器です。われわれ産地メーカーでは、この漆器の包装作業も重要視しています。 塗りあがって職人の手を離れた後の漆器に、傷や漆のチヂミ、ほこり、塗り残し、変色、手垢などの問題がないか、 出荷前の最後のチェックができるのはこのタイミングになります。また、製品サイズにぴったりあった箱を用意し、 薄葉紙(うすようし)や少し厚めの紙を使い、優しく、しっかり包装することで、 お客さまの手許に届くまえに箱の中で動いて傷がつくことを防ぎます。 お客様は、きれいに折りたたまれた包装を見てその中の漆器への期待も一層膨らみます。
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「包装のテクニック」

お椀、重箱、屠蘇器など漆器には、丸型、球面、多角形、そのほか様々な形状をしたものがあります。 紙を使ってこれらの器を美しく、スピーディに、大量に包装して箱に入れる作業は、不慣れな人では決してうまくいかず、 経験やテクニックが必要になります。
当社では、器を包む紙として薄葉紙(うすようし) 、純白ロール紙、和紙風の紙などを使っています。 それぞれの紙を漆器の素材や大きさによって使い分けます。一般的に紙のツルッとした面が表というイメージがありますが、 漆器を包む場合はこのツルッとした側を内側(漆器に接する面)にして包装します。 これは、昔利用していた手漉き紙のときに紙の裏面にゴミが混入していて商品に傷がつくことがあり、 紙の表面を内側にして包装したことが今の手法に影響しているようです。 また、ざらつきのある裏面を表に見せたほうが和紙の風合いが出て、包装後の印象がよいことも理由の一つです。
(山本泰三)
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「社長が語る昔と今」

昭和30年代頃まで、当社ではお椀の発送が主流でした。お椀の包装はお椀とお椀の間に半紙の合い紙をはさみ、 それを手漉きの和紙袋に入れ包装しました。その袋はとても丈夫で引っ張っても破れる事が少なく、 お椀保存のため何年も使用出来ました。
段ボールが無い時代、包装した商品を出荷するための荷造りにはかなり時間と手間がかかりました。 和紙袋に入れた商品を稲ワラで包み、さらにその何束かを米俵に入れてくるみ、ワラ縄で固く結んで発送しました。 お重や膳などは組み立て式の木箱を使い、商品を中に入れ、間には緩衝材のワラを詰めて梱包しました。 消費地の問屋さんでは多量のワラが商品と一緒に届き処分にお困りだったようです。
配達は鉄道便がほとんどで、会社から2キロほど離れたところに鉄道(南越鉄道~廃止)が走っており、 荷車か自転車リアカーで運んだものです。東京や大阪まで到着に5日~1週間かかりました。 急ぎの時は夜行便で持っていったこともありました。木箱やワラでの荷造りは昭和40年頃まで行われました。 トラック輸送が主流となり、宅急便が発達して荷物が出荷翌日に届く現在ですが、当時からは夢のような話でした。
(山本一男)
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「担当者に聞きました」

当社で製品の「包装」を担当している渡辺さん、包装した製品を出荷するための「梱包」を担当している竹内さんに聞きました。
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――器の形状として包装が難しいものはありますか?
渡辺さん : 比較的手間がかかるのは、球面と多角形の包装です。手提げ重のように大きくて手提げ部分と台、重箱に分かれているものも難しいです。
――包装の際に注意していることはありますか?
渡辺さん : メーカーとして最終検品の立場になるので、傷がついていないか、上塗りのときのチヂミ、塗り斑、ハジキがないか念入りに確認しています。また、ホコリや手垢や指紋が残らないよう気をつけながら表面の汚れをきれいに拭き取って包装します。

――(漆器包装30年の渡辺さんが)包装の仕事をしてきてハプニングや良かったと思うことはありますか?
渡辺さん : 製品の一部(沈金と呼ばれる絵柄の部分)で使用した漆が完全に乾いていない状態で製品を触ってしまい、漆にかぶれたことがあります。この仕事をしていたことで、仕事以外でもいろいろなものをきれいに包むことが出来るようになったことが、良かったことです。

――梱包の際に気をつけていること、工夫していることはありますか?
竹内さん : 商品を運ぶ際、角が傷みやすいので、特に角になる部分は緩衝材を多く入れております。また、重い商品は小さな箱に、軽い商品は大きな箱にいれて、運搬する方の負担を軽くしたり、なるべく荷物を一個にまとめれるように梱包し、効率的な配送を心掛けています。

――梱包の仕事をしていて、よかったことはありますか?
竹内さん : 普段の生活であまり意識したことはなかったのですが、先日知人の引越しを手伝った際に手際良く梱包ができ、その知人に感謝された時、仕事の経験が生きているのだなと感じました。

包装、梱包の仕事は、ひとつひとつ職人がつくりあげた漆器を大切にお客さまのお手元に届けるための重要な作業になります。当社では、これからも丁寧な包装、梱包の作業につとめていく所存です。
(山本泰三)
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