結婚・出産イベントでの漆器の活用 Vol.201~204

「最近の引き出物の傾向」

10月に入り、秋のウェディングシーズンとなりました。ライフスタイルの変化により若い方が普段の生活で漆器と接する機会が少なくなった昨今、ご結婚を機会に引き出物や新居での食器としてはじめて「漆器」をご検討していただく機会が多くなったと感じています。
昔から漆器はご婚礼の引出物としてよく使われていました。ガラス製品や焼き物に比べて「割れない」「長持ちする」という漆器の特長が婚礼時の縁起のよいキーワードとなり、好まれる傾向にありました。
最近の引き出物は縁起をかつぐことよりも、実用性を重視したり、カタログから選べるようにするなど受け取る方の立場を考えた贈り物が多く、ガラス製品や陶磁器なども素敵な贈り物として積極的に使われています。漆器の種類もいわゆる豪華な蒔絵の入ったものより絵柄が少ない実用的なもの、従来あまり使われなかった白と黒のモダンな製品、使いやすい合成樹脂素材の製品など若いお客様の自由な発想で選んでいただいている傾向にあります。
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「出荷時の留意点」

ご婚礼の引き出物用として私どもの漆器をご注文いただく場合、納期や熨斗のかけ方、化粧箱の種類など通常以上に念入りにお客様と確認をとりながら出荷の手配をすすめていきます。
特に引き出物は婚礼のおめでたい席にお集まりいただくお客様に手渡しするものですので、間に合わなかったから後で発送するということは許されません。ご注文をうけてから製作に着手する漆器の場合は、特に工程管理を徹底する必要があります。
また当社で包装まで行う場合は、熨斗(のし)のかけかたも慎重に確認します。「内熨斗」か「外熨斗」かのご希望をうかがい、熨斗にお入れするお名前について旧字体でないかなどの確認を行います。たとえば高橋様の「高」や渡辺様の「辺」、斉藤様の「斉」などです。さらに、輸送の際に熨斗が破れてしまうなど万一に備えて、商品とは別に多めに熨斗を用意してお納めします。
別の製品を組み合わせて一つのギフトにする場合など化粧箱をオリジナルで製作することもあります。その場合はお色や形状、質感などお客様に自由に選んでいただけますが、できあがったものがご要望のイメージにあうように、事前にサンプルをおつくりするなど何度もお客様とやりとりを行います。ご結婚されるお二人、そして贈り先の大切なお客様に喜んでいただける引き出物になるよう細心の注意を払って取り組んでいます。
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「お喰い初めの器」

ご出産に関連する儀式のひとつに「お喰い初め(おくいぞめ)」があります。一生食べ物に困らないようにと祈りを込めて赤ちゃんに食べさせる儀式のことで、生後100日前後に行います。家族の一員として仲間入りすることを祝い、昔から「初めて母乳以外の物を口にする日」といわれていますが、実際の離乳食は生後5ヶ月目以降が開始の目安なので、儀式ではお母様などと一緒に「食べる仕草」だけ行います。
この儀式で使われる漆器が「喰初膳(くいぞめぜん)」です。喰初膳の色は一般的に男児が朱塗り、女児が外側を黒塗り、内側を朱塗りにした膳を使うのが一般的です。印象としては逆のような気がしますがこれには以下のような諸説があるようです。
・ 男児(女児)が生まれた時、次は女児(男児)が生まれるようにと願った。
・ 男児(女児)が成長したときに良き伴侶となる女性(男性)と結ばれるよう願った。
・ 古来より殿様や殿方には高貴な色目を使う風習があり、漆器ではその色が朱色だった。
一般的に、喰初膳には赤飯、尾頭つき魚、煮物、すまし汁、香の物という一汁三菜を盛り付けます。香の物としては「梅干」「小石」を用意し、梅干はしわが一杯になるまで長生きするよう、小石は丈夫な歯がはえてくるよう願いが込められています。
喰初膳を製作している私たちメーカーですが、お喰い初めに使う器は各ご家庭のスタイルにあわせてご用意されるのがよいと考えています。家紋入りの本格的な漆器でそろえるもよし、通常使っている器で簡略的に行ってもよいと思います。日本古来の儀式を是非これからも大切に残していければと願っています。
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「赤ちゃんへの贈り物」

ご出産のお祝いとして日本古来の器である「漆器」を贈るのも粋なプレゼントです。おじいちゃんやおばあちゃんからお孫さんへ贈る場合や、お友達やお知り合いの方へお子様の誕生祝いなど、当社へも目的やご予算に応じた漆器のお問い合わせをいただきます。
子供用のお椀やスプーンは実用的なものとして人気があります。木製漆塗りの製品は軽くて温もりがあり、落としても割れないなどお食事をはじめたばかりの赤ちゃんにはぴったりの器です。お椀が倒れにくいように高台が無いお椀もあります。さらに赤ちゃんのお名前を器に蒔絵でお入れするサービスはご好評いただいています。
また、当社では書道筆生産日本一の広島県熊野町の筆メーカーさんと「赤ちゃん誕生記念筆」を開発しました。これは、赤ちゃんが初めてカットする毛髪でつくる筆で、最初に生える美しい毛先の状態の毛でつくられます。すこしずつ時間をかけて美しく経年変化する漆と、健やかな赤ちゃんの成長を祈る気持ちを重ね合わせた飾り物の製品で、特にお孫さんなどご家族へのギフトとして大変ご好評をいただいております。
ライフスタイルの変化により漆器離れが進んでいる昨今ですが、ぜひご結婚やご出産など新しい人生のスタートにあわせて、日本が誇る漆の美しい世界に関心をもっていただければと考えています。
(山本泰三)
20091023

赤ちゃん記念筆「ほころ」についてはコチラ http://www.hokoro.jp/index.html