お正月の支度に込められた願い Vol.49~52

「屠蘇器」

061103こんにちは、千次です。11月に入り、当社では慌ただしくお正月用品(迎春商品)の出荷準備をしています。
さて、お正月の支度には、それぞれに長寿や幸福を願う気持ちが込められていることをご存知でしょうか。今回から4回にわたり、新年を迎える心の準備という意味もこめて、お正月の支度に込められた願いや謂れ(いわれ)について、当社の商品と一緒に簡単にご紹介したいと思います。
今回のテーマは「屠蘇器」。「お屠蘇」をいただくときに使われる器です。「お屠蘇」とは、元日の朝、お雑煮をいただく前に家族そろって飲む薬酒のことで、一年の邪気をはらい、寿命を延ばすと言われています。お屠蘇を飲む習慣は中国から始まり、平安中期に日本の宮中に伝えられ、その後、一般的なものになりました。山椒・防風(ぼうふう)・百朮(びゃくじゅつ)・桔梗・細辛(さいしん)・乾姜(かんきょう)・肉桂(にくけい)などの漢方薬を調合して絹の袋に入れ、酒またはみりんにひたしてつくります。現在は屠蘇散(とそさん)として薬局で市販されています。「お屠蘇」は文字どおり鬼気、悪魔を屠(ほふ)り、人魂を蘇らせる酒という意味です。
大晦日に「お屠蘇」の準備をした屠蘇器、御節の入った重箱を床の間に飾り、元旦にいただきます。まず「お屠蘇」を家族そろったところで若い人から順番にいただくのが習わしです。これは若い生命力を分け与える長寿への願いですので、「家族そろって」いただく意味があるのです。
新年の一口目は、厄払いのお屠蘇をどうぞ。

「重箱」

061110立冬をむかえ、北陸・福井は霰が降り、冬の空気になりました。ちょっと寒さを感じる季節、紅葉も益々鮮やかさを増しています。
さて、正月用意のご紹介、今週は「重箱」です。重箱は正月に頂く「お節」を盛り付ける器として知られています。「料理を重ね、喜びを重ねる」という意味があり、重箱を一段一段広げていく様は日本のお正月の伝統を楽しめる瞬間だと思います。そこで、お節料理に込められた願いについて、ここで少しご紹介いたします。

白米:1本の稲から米粒が沢山、収穫出来るため、子孫繁栄多産の願い
昆布:「よろこんぶ」から「喜び」を意味する
海老:髭が伸び、腰が曲がっているところを老人に見立てた、長寿への願い
豆 :マメマメしく働けるように
子孫繁栄、長寿、健康で働けるようにという願いと喜びが含まれた「お節」をぜひ新年に味わって頂きたいと思います。また、お節は日持ち出来るように料理されていますが、あわせて漆そのものに防腐作用の効果があるので、昔からお節には「漆塗りの重箱」が使われてきたのです。

「雑煮椀」

061117今回は「雑煮椀」です。通常より大ぶりの蓋つきのお椀で、お餅が入っても器の空間にゆとりがあり、美味しそうに見えます。蓋を開ければ湯気が上ぼり、香りも食欲をそそります。
さて、お雑煮はふるさとの味わいをしっかりと受け継いでいるものです。当社のある福井のお雑煮は、田舎味噌をベースに丸餅が主流です。カツオと昆布で出汁をとり茎が 少しついたカブを入れます。カブが入っていることが福井版の特徴です。丸餅は焼かないでそのまま煮る家庭が多く、適当な硬さになったらお椀に盛り、カツオ節をかけて 頂きます。また、お餅を入れる前に白菜を敷き、お餅が鍋下につくことを防いだりしています。いつも福井のお雑煮で新年を迎える私ですが、全国のお雑煮についてちょっと調べてみました。 関東ではすっきりした味わいの醤油仕立てのすまし汁をベースに、汁がにごらないよう角餅を軽く焼いていれるのが一般的なようです。具材は、かまぼこやしいたけ、鶏肉に青菜を少し加えるぐらいで、あまり多くいれないのが主流とか。一方、 関西のお雑煮は、白味噌で上品に仕立てて、おめでたい八つ頭や京人参、大根、青菜など野菜が中心のお雑煮が多いとのこと。お餅は丸餅を使う点で、福井は関西のお雑煮 に近いようです。他に、長野県では富山から入る寒ブリを入れるそうですし、山陰では海草が入り、香川県では白味噌仕立てに餡入りのお餅を入れるとか。いろいろ調べて いるうちに、どれもおいしそうで、全部試してみたくなりました。
「雑煮椀」は通常より高台(お椀の外側の底にある台)が高く、大ぶりですが持ちやすくなっています。木製の漆の器は熱さも通しにくく冷めにくいので、正月は縁起の よい絵柄の入った「雑煮椀」で熱いお雑煮をどうぞ・・・。

「お飾り」

福井は大分、寒くなりました。自然豊かな漆器産地である、ここ鯖江市の河和田(かわだ)では、先日まで熊の出没に危惧していました。日が暮れると市役所の車がスピーカーで注意を呼びかけていましたが、寒くなり熊も冬眠を始めたのか巷も静かになっています。
さて、当社は、迎春商品の出荷で忙しさのピークをむかえています。最近は重箱、屠蘇器、雑煮椀などのほかに、正月のお飾りとして「門松」や「羽子板」などの漆の小物が人気です。デザインはシンプルなので、和洋どちらの家屋にも合うようになっています。3点ほど紹介いたします。
一般に、新年を祝って家の門口などに飾られる「門松」とは、その年の神様をお招きするための目印であり、また、神様がお降りになったときに宿られる場所(依代(よりしろ))を表すものです。当社の商品は、竹筒に似たてた木に朱・黒・緑で色分けし、黄色の組紐で結わえました。台は朱色なので華やかな雰囲気です。
「羽子板」には、魔除け・厄被いの意味があります。また、新年の幸福を祈り、誕生したばかりの赤ちゃんが、丈夫に、すくすくと育つようにとの願いを込めて飾ります。「独楽(こま)」といえば子供たちの玩具ですが、「心棒(辛抱)は金(お金)」「一本立ち(一人前になる)」などお正月に縁起の良い遊びと言われているようです。当社の独楽は、お箸置きにもなるアイデア商品です。
獅子舞で使う「獅子頭」は、五穀豊穣の祈りや悪魔、鬼(邪心)を払い清めるとされています。木で獅子の頭を作り朱に金の目が光っています。お飾りの時期は、12月29日の準備から1月15日くらいまでですが、いわれにより、さまざまなようです。
佳い年になりますように。
(宮川千次)

061124

当社の迎春商品はオンライン商品カタログをご覧ください
http://www.yamakyu-urushi.co.jp/07/std/01/index.html

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