白漆 Vol.57~60

「白漆はミルクティ色」

こんにちは、千次です。師走も残すところわずかになってまいりました。ここ福井県の漆の産地である河和田は、ちょうど昨年の今頃、久しぶりの大雪で1メートル以上の雪積があったのですが、今年は暖冬なのか、まだ平野部では雪は積もっていません。ほんの少し、真っ白な景色が恋しいと思う今日この頃です。
さて、今回は「白漆」をご紹介したいと思います。
漆器の色といえば、黒色と朱色が一般的に知られていますが、他の色があることはあまり知られていません。漆は本来、樹液なので原液は透き通った茶色をしています。様々な色の漆「色漆」を作りたいときは、色粉と漆の原液を練り合わせて作ります。色粉があればどんな色も出来るのです。しかし、純白の漆だけは出来ません。漆の原液は透き通った茶色のため白い色粉と練り合わせると、どうしても少し茶色見を帯びています。
白漆の器を「ミルクティ色の器」と言っておられた方がいます。柔らかで、優美な質感があり、ナチュラルな風合いの白漆の器にピッタリの言葉でした。
それでは、今年もありがとうございました。どうぞ、良いお年を!
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「白漆の歴史」

あけましておめでとうございます。
本年も「掻きます!漆の話」をどうぞよろしくお願いいたします。
このお正月に漆器をお使いいただいた方は大勢いらっしゃると思います。優美な質感を表現する黒や朱塗りの漆器、金を使った蒔絵や沈金などの加飾が施された漆器は、今年一年の繁栄を願い、豊かな生活に通じていきます。年の初めに伝統ある日本文化に触れることで、とても心が改まりますね。
漆が日本で祭祀の時の道具や器として使われ始めたのは縄文時代からと言われていますが、白漆の歴史は浅く、その歴史は大正時代に白粉が静岡工業試験場で開発されてからです。当時は黒と朱のみだった漆の世界に白粉と漆を練り合わせた白漆ができ、歴史的な出来事となりました。 漆器の各産地が白漆を作る技術を取得するために静岡に出向き、各地に伝承されました。
現在の白漆には、主にチタンや亜鉛花が白粉として使われていますが、他にも様々な色粉が開発され、カラフルな色漆が出来ています。
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「変化する白漆の色」

お正月も過ぎて、早くも1月の中旬を迎えようとしています。12月の出荷ピークを越えた当社では、新しい年に入り、今年の新作商品を展示会など通じてお客様にご提案する準備が始まりました。新しい商品が、お客様にどう受け入れられるかによって、今年の全体の売上に大きく関わってくるので、大変重要な時期といえます。
さて、このコーナーでは前々回より「白漆」についてお話していますが、今回は「白漆の色が変化すること」についてお伝えしようと思います。色の変化なら、白色から黒味を帯びて変化するのではないかと思われる方がいらっしゃると思いますが、実は、白漆は時間が経つにつれ、より白く変化していきます。漆と色粉を混ぜた白漆の上塗り直後(完成直後)は、透きのある茶色い漆の色が勝っていて、どちらかというと茶色が濃く表れています。時間がたつにつれてゆっくりと白くなっていき、漆の色が落ち着いてくるといった感じでミルクティ色に変化していきます。
なお、黒や朱色の漆も同じような現象がおきているのですが、白に比べると目立ちにくいということです。このような変化が見られるのは自然の塗料の特徴ともいえます。その特徴ゆえに、たとえば「同じ色でもう一つ白漆を塗って欲しい」というオーダーをいただいても、同じ色にすることは難しいので、一度にある程度まとめて製作する必要があるなど、白漆は我々メーカー泣かせの色であるともいえます。
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「白漆を使った新たな挑戦」

桜の季節が待ち遠しい昨今ですが、「白漆」の器に桃色の桜の花びらを蒔絵で散らせた新作「春・白漆お花見セット」をご紹介したいと思います。
この商品は、国産天然木の素材に白漆をたっぷり贅沢に使って塗り上げたお膳、お猪口、木の葉皿、箸置の上に、まるで桜が舞い散っているかのようなデザインで1枚1枚手描きの蒔絵を施してあります。黒漆とは違って、白漆は温かみのある雰囲気です。お猪口の中にお酒を注げば底の花びらがユラユラと舞っているようです。「もう一献」とお酒も進みそうですね。
天然素材100%の漆器の良さは、
保温性に優れているので冷めにくく、手に持っても熱が伝わらないこと
器への口当たりが優しく、まろやかで、重量も軽いため、食べ物が美味しく感じ、食器を手にとり、口をつけて頂く日本文化にはピッタリの器であること
殺菌性があることが証明されたこと
などが挙げられます。古くは、黒や朱色が主流の漆の器ですが、ライフスタイルやお客様のニーズが多様化した昨今、日々の暮らしに使いたいデザイン、色、形の漆器づくりが求められています。白漆のような新しい感覚の漆器をお使いいただきながら、楽しい食卓を囲んで頂ければ幸いです。
(宮川千次)
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「和のある暮らしのカタチ展」に出品します
http://www.yamakyu-urushi.co.jp/12/070112/index.html
商品に関するお問い合わせはこちらまで
kasane@yamakyu-urushi.co.jp